米国ロックバンド、ニルヴァーナが1991年にリリースした「Nevermind」に使われたCDジャケットの写真の被写体となった本人が、同バンドの元メンバーとその音楽出版社、また撮影した写真家を訴えたことで反響を呼んでいます。
この記事ではカリフォルニア地裁に提訴された内容の概要と、勝敗をめぐっての地元有力弁護士らの意見を米Yahoo!entertainment ニュースによるインタビューから翻訳してお伝えします。
ニルヴァーナCDジャケット訴訟の概要

撮影当時生後4か月の乳幼児だったスペンサー・エルデンさん(現在30歳)。
問題のジャケットに使われた写真は裸の赤ん坊が水中で泳ぎながら釣り下げられた1ドル札をつかもうとしているもの。
訴状ではこの写真が商業目的の児童ポルノにあたるとし、被告人らがスペンサーさんのプライバシーを守るための十分な手だてを行わなかったため「生涯に渡る損害を受けた」としています。
被告人:故カート・コバーンさんの遺産管理人、存命の元バンドメンバーたち、写真を撮影した写真家、アルバムの発売に関わった音楽出版会社など全15人にそれぞれ15万ドル(約1650万円)の損害賠償を請求するなどしています。
同アルバムは全世界で3000万枚を売り上げ、プラチナアルバムに殿堂入りしています。
原告スペンサー・エルデンは今何してる人?
スペンサーさんのプロフィールを簡単にまとめました。現在の職業としては「画家」「アーティスト」、また「モデル」としても活動しているそうです。
- 生年月日:1991年2月7日
- 出身:カリフォルニア州ロスアンゼルス
- 大学:アートセンター・カレッジ・オブ・デザイン
- 身長・体重:177cm、70kg(およそ)
写真を撮られることになった成り行きは、写真を撮影したカーク・ウェドル氏(被告人の一人)とスペンサーさんのご両親が知り合いだったとのことです。
提訴において原告のスペンサーさんは、写真をCDジャケットに使用することに関してご両親は契約書にサインなど一切していないと主張していますが、実際少額ではありますが金銭は受け取っているようですので合意の上であったということでしょう。
その額米200ドルですので当時の為替で約2万5千円といったところでしょうか。
写真家のウェドルさん自身も機材セットの用意などすべて込みで1000ドルしか受け取っていない(約12万5千円)というのでどれくらいニルヴァーナがそのころまだ無名だったのかが分かりますよね。
スペンサー・エルデンに対するSNS上での人々の反応
SNS上での人々の反応は冷ややかといったほうがいいかもしれません。
というのも、過去に何度かスペンサーさん自身が問題のジャケット写真をパロディにした写真(成長後、パンツは履いているもの)を撮影して投稿してきているからなんですね。
アメリカの陪審員制度を考慮するとあまり好印象ではないように見えます。
こちらで本人が実際パロディにして撮影・投稿した写真が確認できます。
"But it’s always been a positive thing and opened doors for me." - Spencer Elden 2015 pic.twitter.com/ew8VQKqSdi
— Future Shlock (@FutureSchlock) August 25, 2021
地元カリフォルニア弁護士の見解
スペンサーさんの弁護士はロスアンゼルスのMarch Law Firm PLLCという児童虐待や大学キャンパス内の性犯罪に特化した弁護士事務所のロバート・ルイスという元連邦検察官の弁護士です。
これに対してYahoo!entertainmentニュースはロスアンゼルスのマイケル・アッカーマンという芸能関係専門の弁護士に今回の件について意見を聞いています。要点のみまとめてみました。
エンターテイメント専門弁護士の見解
- スペンサー氏本人がSNS上で問題の写真のパロディを数年に渡って投稿してきているので、生涯に渡る精神的ダメージを受けたと主張することは難しいだろう。実際の虐待の被害者は通常そんなことはできない。
- 原告が主張するような性的搾取とされる内容が実際にこのジャケット写真には見受けられない。ヴァン・ヘイレンの「バランス」やスコーピオンの「ヴァージンキラー」、ブラインドフェイスのCDジャケットなどなら分かるが、この問題の写真にはそういった要素はないし、原告の主張する「生涯に渡って仕事ができなくなるほどの」精神的ダメージをうけたとはずいぶん飛躍しているように聞こえる。
- 彼が写真の赤ん坊だと誰にも知られずに生活していくことはできたはずなのに彼自身がカミングアウトしてしまっている。
またアッカーマン氏はスペンサーさんの弁護士がいかにずさんな仕事をしているか指摘しています。
カリフォルニア州連邦地裁に提出された提訴状の中で被告人「DGCレコード」を「DCGレコード」と書き間違えているんだそうです。( 7ページ目最後の行)
アメリカらし過ぎるwww
またYahoo!entertainmentニュースはブライアン・カニングハムというプライバシー保護とデータ管理やサイバーセキュリティ関係専門の弁護士にも意見を聞いています。
以下要点をまとめました。
プライバシー保護・サイバーセキュリティ専門弁護士の見解
- 陪審員がどう感じるかという点を考慮するとこういう感傷的なケースは難しいだろう。「証拠」として法廷に提出されるもの(作品の意図など:性的搾取としての意図が作品にあったかどうか)がどのように法に反するのかを立証できるかにかかっている。
- 原告が主張するところの「自分たちの音楽を売る目的のために性的に搾取された」という点は、アメリカの児童ポルノに関する法律が取り締まる主な対象とは少し異なる。
- このCDジャケットが資本主義を表したもので性的な意図はまったくないことは有名だ。
- 両親が金銭を受け取っているということは同意の上で撮影された。
- 本人がパロディで写真を投稿したりニルヴァーナに関連するタトゥーを入れるなど、今回の訴訟に至るまで相反した行動をとってきている。
児童ポルノのケースは時効がないけれども、陪審員がスペンサーさんが今の今まで訴えを起こさなかったこと(そのうえ訴訟で主張しているのと相反した行動をとってきていること)をどうとるかを考えれば原告スペンサーさんにとっては有利な要素はないのではないか。
結局は陪審員次第なので児童ポルノの法律でこの件を裁くことはできなくとも、このCDがどれだけ利益をあげたかを考慮して妥当と思われる金額がスペンサーさんに払われるべきだという結論に至る可能性もあるとのこと。
なるほどですね。この結果が一番ありえそうですね。
まとめ
ニルヴァーナのCDジャケットに関する訴訟について、原告のスペンサー・エルデンさんのプロフィールや訴訟の内容、地元弁護士の声などまとめました。
リトル・ミーでした。